言語学への誘い(屈折語?ひねくれてるの?)
皆様お初にお目にかかります。ジェミニと申します。主に「みんはや」に出てくる問題について、知識を深めるきっかけとなるような記事を書ければと思っております。
さて、早速ですが、先日下記の3問がみんはや問に追加されたことを知り、「お、これもクイズになったか」と感心させられたことから、今回の記事執筆に至りました。
タイ語や中国語などのように、接辞や語形変化を用いず、語順などによって文法的関係を示す言語のことを漢字3文字で何というでしょう? A.孤立語
ラテン語やドイツ語、アラビア語などのように、単語の意味をあらわす部分と文法的な役割を示す部分が密接に結合した形で語形変化する言語のことを、漢字3文字で何というでしょう? A.屈折語
日本語やトルコ語などのように、単語の文法関係を示す時に、その単語に接頭辞や接尾辞などの形態素が次々と付着していく特徴を持つ言語のことを、「にかわ」を意味する漢字を使って何語と呼ぶでしょう? A.膠着語
みんはや猛者からすれば、おそらく言語名が2つ並んだあたりで確定してしまうことになると思いますが、この問題…
「何言ってるんですか?」ってなりませんか?
専門用語多くて分かりにくいんだよ!ってついついなりがちです。
これ、言語類型論というものに由来しているのですが、どういうものなのか筆者なりの解釈で説明します。学問的に正しく勉強したい方は是非学んでみてください。「学問的に多少誤った説明だとしてもまずはわかりやすいイメージに着地する。」これは自分のポリシーです。後で正しい認識に改めればよいのです。
【ジェミニが思う言語形態理解のポイント】
①「○○語」は「孤立/屈折/膠着語」という短絡的なものではない。
→「孤立/屈折/膠着語的傾向が強い」という認識の方が適切
②3つの違いは日本語で言う「助詞」の観点を見るとわかりやすい。
【膠着語】
ということでまずは日本語で試してみましょう。
(1)私は あなたを 愛しています。
ここで着目するのは先に掲げた通り助詞なのです。どういう役割を果たしているかというと…
「は」…私という名詞が主語であることを示すマーカー
「私」と「あなた」を繋ぐ接着剤(=にかわ)
「を」…あなたという名詞が目的語であることを示すマーカー
「あなた」と「愛している」を繋ぐ接着剤
それぞれの名詞等の文章での役割を定めたり、名詞同士をくっつけて文を成立させる付属語が存在しているのが、膠着語の特徴ですね。
では、他の類型の言語ではどうなるのでしょう?
【孤立語】
(2)我 愛 爾 (正式な中国語表記でなく申し訳ありません。)
中国語の「ウォアイニー」ってやつですね。日本語では助詞で主語などの役割を追加してましたが、孤立語は…?
「単語の順番が役割(主語、目的語等)を表すから、日本語の助詞のような付属語は使用しない!」というのが答えになります。
(2´)我(1番目は主語) 愛(2番目は動詞) 爾(3番目は目的語)
※あくまでこの文のルールであり、中国語の文法すべてがこの形ではありません。
それぞれの名詞や動詞が、助詞で接続されることなく単独に存在していることから「孤立語」という名前が付いたのかなと思われます。
【屈折語】
じゃあ屈折語って何なんですか?ひねくれ言語なんですか?
そんなことはありません。ドイツ語で確認してみましょう。
(3)Ich liebe dich
これも「私はあなたを愛しています。」の意味ですが、どこがポイントなのでしょう?それを説明するために、主体と客体を入れ替えてみましょう。
(4)Du liebst mich
「あなたは私を愛しています。」という自意識過剰な文になったことは置いておき、ポイントは、語彙が文の中で変化し、役割が変わっていることです。
「私」→主語ではIch、目的語ではmich
「あなた」→主語ではDu、目的語ではdich
あえて日本語と比較をするならば、「日本語でいう助詞を、名詞等の形を変化させることで単語の中に組み込んでいる(1つの単語が日本語で言う名詞プラス助詞の役割を果たしている)」ということになります。1つの単語を語形変化させることで、文章中でのその単語の役割を変えていくというのが、屈折語の特徴です。
他にも、英語で言うlove(動詞)が-lyの接尾辞をつけることでlovely(形容詞)となり、文章中での役割が変わるような性質も屈折語の特徴です。
長々と説明してきましたがいかがだったでしょうか。あくまで筆者の解釈であり、学問上は少々誤った説明もあり得ます。学問は間違いに気づき、真理を求めることが重要です。皆様の学びのきっかけとなれば幸いです。
ちなみに、「抱合語」なんていう類型もあるんですよ。もしよければ調べてみてはいかがでしょう?